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そもそも合併症と後遺症はどう違う?
レーシックだけに限らずどんなに安全だと言われている手術でも、合併症や後遺症が起こる可能性は絶対にゼロだとは言い切れません。もちろん手術の前には起こる可能性がある合併症や後遺症について必ず医師から説明があります。
この合併症と後遺症を同じものだと思いこんでいる人もいるようですが、実は合併症と後遺症とでは意味合いが異なっています。それぞれの違いについて説明していきます。
合併症とは
手術などによって不具合が起こったが、治療が可能で症状も一時的なものを合併症といいます。
つまり不具合は永久に続くものではなく治療などによって改善されます。
後遺症とは
手術などによって起こった不具合が、治療などで改善されず半永久的に残ってしまったものを後遺症といいます。
レーシックの場合は、角膜移植など最終的な治療方法でしか対応ができません。
上記のように合併症と後遺症とではその重症度も全く異なります。合併症と聞くと手術に対する不安も高まるかもしれませんが、正しい処置や治療を受けることで症状は改善されるものだということを覚えておきましょう。
様々なレーシックの合併症・後遺症とその原因
レーシックで起こる可能性がある合併症や後遺症としては次のようなものが考えられます。
レーシックの合併症・後遺症1:異物感
レーシックでは角膜を切開するため手術後しばらかくはゴロゴロするなどの異物感が起こります。しかし角膜は自然修復能力がとても高いため、時間の経過と共に症状は改善していきます。
レーシックの合併症・後遺症2:ハロー・グレア
夜間などに光がにじんだりぼやけて見えることをハロー、光がまぶしく見えることをグレアといいます。レーシックではこのハロー・グレアの症状が出やすく代表的な合併症ともいわれていますが、症状の感じ方には個人差が大きく、全く気にならないという人もいれば、夜間の運転に支障をきたしてしまうという人もいます。
時間の経過と共に角膜が安定してくると症状も改善されていくことが多いです。
レーシックの合併症・後遺症3:過矯正
遠くをよく見えるように合わせ過ぎてしまうと矯正が強過ぎる過矯正となることがあり、頭痛や吐き気・近くが見にくいなどの原因となります。
レーシックはレーザーで角膜を削るため、その際にどうしてもわずかな誤差が出てしまいます。遠くの見え方にこだわりすぎてしまうと、この誤差が大きく出てしまった時に過矯正となります。
レーシックの合併症・後遺症4:ドライアイ
角膜をレーザーで削る時に角膜の神経も一部切断されるため、目の乾きが起こるドライアイになることがあります。
ドライアイの症状は個人差が大きく、ドライアイになっていても気がついていない人もいれば、乾燥のため充血がひどくなるという人もいます。角膜の神経は少しずつ修復されるため、時間が経つにつれて症状は少しずつ良くなっていきます。
レーシックの合併症・後遺症5:近視戻り
手術直後はよく見えていたけれど、少しずつ視力が落ちて近視に戻ってしまうことがあります。これを「近視戻り」や「レグレッション」といい、元々の近視が強い人ほど起こりやすいといわれています。
これはレーシックで削り薄くなった角膜が眼圧で押され角膜のカーブが強くなること、近視の進行が止まっていない年齢で手術を行ったこと、手術後の生活習慣などによって近視が進行したなどの原因が考えられます。
手術後に角膜の厚みが十分残っていれば再手術によって再矯正を行います。
レーシックの合併症・後遺症6:角膜混濁
手術後にレーザーの影響で角膜上皮下が白く濁る角膜混濁が起こることがあります。混濁の程度によっては視力に影響を及ぼす場合もありますが、時間の経過や点眼治療によって混濁は改善・消失します。
レーシックの合併症・後遺症7:感染症
角膜を削るのみとはいえ、レーシックは手術なので感染症が起こる可能性はゼロではありません。角膜内で感染症が起こると充血や痛み・混濁・視力低下などの症状があらわれます。術後の感染症を防ぐためにも術後処方された点眼薬をしっかりと使用することが大切です。
レーシックの合併症・後遺症8:不正乱視
レーシックでは角膜の表面にフラップと呼ばれるフタを作成しますが、フタを閉じて元に戻した時にシワやズレが起こる場合があります。シワやズレなどによって角膜表面が凸凹しててしまうことで不正乱視が発生し、視力の低下や二重に見えるなどの症状があらわれます。
レーシックの合併症・後遺症9:層間角膜炎(DLK)
術後の比較的早い段階で起こるフラップ下の炎症を層間角膜炎といい、かすみや視力の低下などの症状があらわれます。点眼などの適切な治療によってほとんどは治りますが、重度の場合はフラップを再度めくってフラップ下洗浄が必要となる場合もあります。
レーシックの合併症・後遺症10:角膜拡張症(ケラトエクタジア)
角膜の削り過ぎが原因で角膜が薄くなり過ぎると、角膜が眼圧に耐えきれず円錐状に前に突出してきてしまうことがあります。これを角膜拡張症といいます。
角膜の突出によって角膜カーブが強くなるため不正乱視や視力の低下などの症状があらわれます。
角膜拡張症と同じ角膜が突出する進行性の病気に円錐角膜があります。
円錐角膜はレーシックの禁忌とされていますが、レーシックを受けた時に発症していない円錐角膜や、ごく軽度の円錐角膜はレーシックを受ける際に気がつかないことも残念ながらあります。その場合、レーシックによって円錐角膜が進行してしまい角膜拡張症となります。
実際にレーシックで後遺症・合併症の起こる確率
視力が良くなると人気のレーシックですが、眼鏡やコンタクトレンズと同じような感覚で安易に手術を受ける人が増えているのも事実です。
レーザーで出来るためシミとりなどと同じように思うかもしれませんが、視力にとってとても大切な角膜を削る手術になります。
上記であげたような合併症や後遺症が起こることによって術後の視力が低下してしまったり、まぶしさ・目の乾き・頭痛など手術前にはなかった症状が出る可能性があるということをしっかりと理解しておかなければなりません。
そこで気になるのがこれらの後遺症・合併症が出る確率です。手術後に何らかの目の症状が5割の人に現れるといわれています。つまり2人に1人は何らかの症状を感じていることになります。
5割と聞くと驚かれる人も多いと思いますが、角膜を切開しているため手術後しばらくは何らかの目の違和感などを感じるのは当たり前とも言えます。ドライアイなどはレーシックだけではなくコンタクトレンズ使用の際でも起こり、またコンタクトレンズでは角膜に傷がつくなどのトラブルも数多く見られます。
つまりレーシックだけに限らずコンタンクトレンズでも合併症や後遺症は起こり、その確率はレーシックよりも高いといえます。
実際にレーシックで合併症が起こったとしても、時間の経過や適切な治療で完治するものがほとんどで、後遺症として深刻な状態になるのはほんの数%と言われています。そうならないためにも合併症や後遺症についての正しい知識をもっておくということはとても大切なことになるのです。
レーシックの後遺症・合併症の現れる時期とその対処法
レーシックの術後3カ月ぐらいは目の状態が安定するに必要な期間といわれています。
これはレーシックだけに限らず白内障の手術などをした場合もいえるので、目の手術をした場合、3カ月は安定までにかかると思っておいたほうがいいかもしれません。
つまり手術直後から3カ月ぐらいまでは後遺症や合併症が現れやすい時期といえるでしょう。
もし手術後に何らかの目の異常が現れた時は、自己判断はせず必ず医師の診察を受けて下さい。手術後は必ず定期的な検診が必要になります。しかし手術後良く見えるようになり目の状態も良ければ大丈夫だろうと定期検診を受けない人が増えています。これが合併症や後遺症を悪化させる原因ともなります。
定期検診をしっかりと受けていれば万が一目の何らかの異常が現れても早期発見・早期治療ができるため症状がひどくなる前に食い止めることができるのです。手術をして終わりではなく、手術後のケアもレーシックにはとても大切なことなのです。
レーシックの合併症は時間が解決してくれる場合も・・・
上記でも説明したように手術後目が安定した状態になるまでには3カ月はかかります。この間は角膜の状態も不安定なので、視力が安定しなかったり違和感やドライアイなどの症状を強く感じるかもしれません。
合併症などは時間の経過と共に改善されていく場合も多いので、医師の診察を受けた上でしばらく様子を見るということも一つの方法です。時間が解決してくれるということも少なくはないのです。
ただ、いつまで経っても症状に改善の様子が見られない・改善どころかどんどん症状が悪化しているという場合は、早急に医師の診察を受けて下さい。
レーシックをすればすごくよく見えるようになると手術後の視力への期待が大き過ぎる人ほど、手術後の見え方に焦りを感じる人が多いです。視力の安定までには時間がかかるということをしっかりと覚えておきましょう。
また手術前にこれらの説明をしっかりと行ってくれる信頼できる医師を選ぶというのもレーシックを行う上でのポイントといえるかもしれません。